両親の事故。
その時、蒼子もその車に乗っていた。


当時7歳。



家族で旅行に行った帰りだった。
片側1車線の高速道路、反対車線を走っていた車が蒼子の家族を乗せた車に向かってきた。



とても大きな事故だった。
生存者がいることが奇跡と思えるほど。


蒼子自身、その時のことはあまり覚えていない。
まだ幼かった事もあるし、それ程衝撃的な出来事だったのだ。



恐怖に、助けがくるまでずっと泣き叫んでいた。
しかし、大きな事故にも関わらず、蒼子の身体には擦り傷一つなかった。





奇跡としか言いようがない。
ありえないことがありえていることに、誰もが首をかしげた。






それからだった。
蒼子に特殊な力が生まれたのは。



他人の傷を自分に移せる能力、そしてその治癒能力。
その、不気味ともいえる力に、蒼子は恐怖すら覚えた。



一度だけ、友だちに対して何気なく力を使ったことがあった。
ただの、親切心だ。
転んで怪我をしているのが、かわいそうに思えた。