「グレイ、祭りで言った"好きになるだけ辛くなる"って、あの言葉一体どういう事なの?」

「祭り・・・?ああ、フランの事ですか?それは、言葉の通りです。彼はこの国でも地位のある名家の息子だし、外見も申し分ない。彼もルリがこの世界に来る前までは浮名を良く流していましたからね。そんな男を好きになったら色々と辛い思いをするだろう、そういう事ですよ。・・・まあ、でも、ルリが来てからの彼は前の彼とは違いますし、諦めない心さえあれば大丈夫だとは思いますが」

「諦めない心・・・」

「どうしようもなく辛くて諦めた時、その時こそは私があなたを貰います。その時は心の中で私の名を叫んで下さい。いつでも飛んで帰ってきますよ」


そう言われた直後に、後ろからぐいっと引っ張られた。
るりは暖かい身体の中に包まれる。



「そんな事はさせない。私が必ず幸せにしてみせる。ルリをもう辛い目には合わせないよ」



顔を上げると、そこにはムッとした表情を浮かべ、グレイを見据えるフランの姿。
るりはとっさに身体を離そうとするが、回された腕の力が強くて振りほどけない。

「王子様のお出ましですね。・・・だ、そうですよ?良かったですね、ルリ」


グレイはニコリと微笑むと、その場から離れていった。