フランは切なそうな表情を浮かべている。
るりはその言葉にすぐには答えられなかった。

確かに自分の世界に戻って、いつも通りの生活をして、吹きたいだけフルートを吹けること。
それはるりにとって一番幸せなことだけれど。

でも自分は、あの時確かにトラックに轢かれて死んでいたと思う。
あの世界での私は、あの瞬間終わったんだ。

もうあの世界には戻れない。
なんとなくだけど、そう思う。


けれどこの世界で来て、あの世界ではできない事を沢山経験している。
何の為にこの世界に来たのかわからないけど、この世界で生かされている。


ひとつ救われたのはこの世界でも少なからず、フルートが吹けること。
自分の好きだったものが、この世界でも出来る。
それだけでも幸せなんじゃないか。