【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「貴女……笑里ちゃん?片岡、笑里ちゃんなのね?」


数年前と変わらないその声。


思い出す、あの頃の温もりも、そして、あの言葉も、全部全部。


「う、は、はっ……」


息苦しい。数年前の罪の日が、短くなる息と共にフラッシュバックする。


冷たい雨が降り注ぐ中、大人達に連れられて大きな車に乗り込む私に叫ぶ、彼女の声。


『人殺し……!この、人殺し!』


この人は間違っていない。罵られるのは当たり前だ。なのに、卑しい私はその言葉が、あの怯えきった顔が、脳にこびり付いて離れなくて、勝手に怯えにも似た感覚に陥る。


衝動的に立ち上がり、私が犯した罪の代償を被るその人から目を背け、走り出した。


「笑里ちゃん!待って!」


本当は立ち止まらなきゃ。私は、あの人に罵られるべき人間なのだから。


いや、本当はあの人だけじゃない。あの日から陰りを与えたあの街の全ての人に、私という人間は罵られるべきなのだ。