【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

近くの大広間からも、騒がしい声が各々聞こえてくる渡り廊下。


声だけで人酔いしてしまいそう。一人になりたい。早く、一人で自分の世界へと帰りたい。


何よりも辛い罰だ。私は、罪人のくせに何でもない顔でこの世界にいなければならない。


目の前がくらくらしてしゃがみ込めば、このまま真っ暗な世界に行けるような気がした。そんなこと、叶う筈なんてないのに。


「お客様、大丈夫ですか?」


しゃがみ込んだ私をここの仲居が見つけたのだろう。頭上から、中年の女性の声が降り注ぐ。


「すみません、大丈夫で……!」


心配をかけるまいと顔を上げた。そして、優しげなその女性の顔を確かめて、言葉を詰まらせた。


何故ここに、なんてことは思わなかった。京都の田舎のあの狭い世界の住人が、この繁華街に出て稼いでいてもおかしな事では無いのだから。


彼女も優しげな表情から、徐々に恐ろしいものを見るような怯えた顔に変えて行く。


この人は、あの街に罪の陰りを与えた私の被害者の一人。


この人は、母の一番の、所謂ママ友という存在だった人なのだから。