【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

心底だるそうな美樹が適当にその場を締めると、パラパラと生徒達が動き出した。


「んじゃ、アタシらも行くべー」


それぞれが各部屋に解散していく中、大部屋ではなく二人きりの部屋に割り振られた私と里佳子は、荷物を置きに行く前に嶋山成に足止めされる。


勿論、傍らには無表情のルイと迷惑そうな楠本燭もおまけ付きで。


「何だよ嶋山。邪魔くさ」


「え、酷い!御堂修学旅行絡んできてから一層俺に酷い!いやね、明日の午後からの自由時間に回るルート話し合いたいなぁと。でも、ほら、俺達大部屋だしー、二人は小部屋だろ?だからお邪魔したいなぁと」


えへへ、と笑う嶋山成に、里佳子は元々つり上がった眉をもっとつり上げてじーっと見る。


「は?嶋山がアタシらの部屋に来たら嶋山臭充満すんじゃん。ヤだよ」


「え、俺って臭いの?嘘?ルイ、大丈夫俺匂うかな?」


「ナルからは体臭よりもどちらかと言うと科学的な香りがするね。エステル型ジアルキル、アンモニウム、エチルアルコール、それからムスクの香りを思わせる為の香料に……」


嶋山成の品の良い柔軟剤の香りを分析し始めたルイに、里佳子は大きな溜息をついて「そういうこっちゃねーよ」と呟いた。


ルイがたまにヒューマノイドらしい事を言い始めるのにも、最早誰も疑問に思わなくなるくらいに慣れ始めている。