【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜




「旅館のあっちの方には崖があるから立ち入らないようにー、あとー……」


バスが宿泊する旅館に到着すると、美樹が気だるげに注意事項を生徒達に説明し始めた。


あまりにも気だるげに話すものだから、他の引率の教師や他のクラスの生徒達は不安そう。


もう慣れたもので、私達のクラスの真面目な連中やそれぞれの班の班長は気にしないで注意事項をしおりにメモしている。


「消灯は22時なぁ。それ以降は先生達の仕事増やさないように気をつけてー。飯は18時からだからそれまで自由時間な」


「ちょっと美樹先生!しっかり説明して下さいよ!」


「えー、だって俺達だって生徒達寝かし付けたら飲むじゃないっすかぁ。あんまり強く言えなくないですか?」


あまりの適当さに注意を入れた女教師にズバッと、しかし気だるげに返した一言に生徒達からパラパラと笑いが巻き起こる。


「ミキ先生は何なの?あれは本当に教師なの?大丈夫なの?」


「それは是非御本人に言ってあげて下さい」


純粋な瞳で首を傾げるルイにそう返せば、嶋山成も里佳子も、楠本燭でさえも笑い声を堪えるようにフルフルと震えながら笑い出す。


「ほんっと、ルイも片岡もサイコー!ひー!」


美樹へ首を傾げていたルイが、今度は、膝をバシバシ叩く嶋山成に疑問を抱いたような仕草で首を傾げた。