【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

不意に、その様子を見ていた嶋山成が、ルイから零れるそれを、落とさぬように手を受け皿にして顎元に寄せた。


「嶋山、お前何やってんだよ?」


「何って……えっと、何だろうな。分かんないんだけどさ、何か、勿体ない気がして」


自分でやっている事なのに何でか分からないと言った様子の嶋山成だけど、行動自体を止めるつもりは無いらしい。


眠っているような形のルイの瞼から落ちるそれを、宝物のようひ顎元で受け止め続ける嶋山成。


初めこそ訝しげに見ていた里佳子や黙っていた楠本燭も、その光景に徐々に表情が和らいだ。


「俺、嶋山の言いたい事なんだか分かるなぁ。何かね、俺から見るとルイは、片岡さんの代わりに感情を示しているような気がするんだよね。その涙も、君のもののような気がするんだよ」


ルイのその温かなそれは、私の、代わりの……?


楠本燭の言葉に、嶋山成の受け皿の掌の中の温もりを持ったそれが、私が自ら望んで失った大切な何かなような気がして、また、腹の奥がもんやりとした。