【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「嶋山ァ!いつまでも伸びてねぇで水寄越せや!このクソッタレが!」


「何!?御堂鬼畜!?……って、片岡?気分悪いの?大丈夫?」


「どうしたの?片岡さんバス酔い?酔い止め持ってるから言ってくれれば良いのに」


少しの変化に気づく人、少しの変化にも大袈裟に心配してくれる人、少しの変化にすぐ対応してくれる人。


こんな温かなところに、私はいてはいけないのに。許されはしないのに。逃げる事なんか出来ないのに。


「リカコ、隣譲って」


「お、おお……」


そして、これまでの短い人生の中でもルイは現れなかった存在。


どんな時でも、私の傍らにいて、何をするでもなく寄り添う存在。


この柔らかさも、温もりも、本当は全部作り物なのに、分かってるのに、知らない筈なのに、どこかに置き忘れた懐かしい存在のような、そんなものがルイなんだ。


エコモードのルイは、リカコから私の隣を譲り受けると、そっと私の小指と自分の小指を絡めとり、そのまま私の肩に小さな頭を乗せて瞼を閉じた。


その瞼からまた、私が捨てた温かなそれを惜しげもなく流しながら。