【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

しばらくすると、いつもの様に猫背でダルそうな美樹がゆるっとやって来て、教卓の前に立つ。


「はーいおはよー。今日も面倒臭いけど一日が始まりまーす」


いつもの様に美樹が教師らしからぬ言葉で全員の機能を動かし始め、学校生活が始まる。


「今日も欠席者無し。何だ?お前達俺の若い頃よりずっと真面目だよなぁ。成や里佳子なんか表面上はサボりそうなもんなのに」


「ちょっと!ミッキー教師失格!偏見!」


「ホントクズだよな美樹!テメェもう少し生命力みなぎらせろや!偉い先生にチクるぞ!」


そして、この仕組みのトップにエンジンを意図的に掛けて、上手くシステムを起動させて行く。


「もーハイハイ。ごめんごめん。何か朝から会議で修学旅行前だから今日明日生徒にちゃんと指導しろ的な事言われて先生朝から疲れてんのよ。察して」


「ンなことアタシらが知るか!」


この平穏はきっとずっと上手く行って、仕組みは回り続けるのだろう。


「あ、面倒臭いついでなんだけど、笑里、ちょっと話があるから二者面談ね。……あー、やっぱりルイがいても構わないから三者面談でも良いけど」


そして、仕組みからオイルが必要の無い古びた歯車へと降り注ぐ。錆を拭きとろうとでも言うのだろうか。


「……はい」


「分かりました。ボクも同行します」


「じゃあ、そんな感じで他は移動教室よろー」


端的なホームルームは終わり、皆が移動教室の準備をする中、私とルイだけは猫背がに股で歩き出した美樹の後ろをついて行く。


そんな私達を、嶋山成、里佳子、楠本燭だけがじっと見ているのが、視界の端にチラついて見えた。