【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

そして、この人間社会の仕組みが一般的なものでなく、もうひとつの部品が少し変えているというのを、ルイは今から目撃する事となる。


「はよー!おっす!おー!おっ?何だ最近体調悪いのか?朝飯食えよなー」


それが、もう一人のトップである、嶋山成の存在なのだ。


彼は教室に入った瞬間から誰しもを惹き付ける力があり、そして、自らが惹き付けた者皆に平等に出来る能力を持っている。


仕組みからはじかれて転げ落ちそうなあの子にだって、平等にだ。


だから、だれも転げ落ち無い。


里佳子が無自覚な捨てる神だとしたら、嶋山成は無自覚な拾う神なのだろう。


こうして、この教室の小さな仕組みはどの部品も失う事なく機能し続ける。


「人間は、面白いね。データ通りには進まない。だから、皆生きて行ける」


ルイは、本物みたいな笑顔で笑う。整った薄い唇は緩やかな孤を描き、瞼は円やかな放物線を描く。


「はよ!片岡、ルイ!ん?何かルイ、ちょっと機嫌良さそう!」


「おはよ、ナル。ナルの顔が面白いから我慢出来なくて笑っちゃったんだ」


「ヒドッ!でも、せっかく笑うならちゃんと俺の見てるとこで笑えよー。お前の笑顔、レアモノなんだからさぁ」


そして、ルイもまた、そこに新しい高性能な部品として迎え入れられようとしているのだ。