【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「ルイ、お願いやめて」


お願いだから、ルイも、他の全員も、私をそっちの世界に引っ張るのはやめてよ。


ルイは、その精巧に造られた瞳からホロリとひと雫、私にだけ分かるように光を落とすともう一度だけ私を見つめ、そっと私から離れた。


「はー、ビビった。ルイってたまに不思議ちゃんだよな」


「フシギチャンって、どういう意味の言葉なの?リカコ」


私から離れたルイはもういつも通り。里佳子が投げかけた言葉の意味について関心を持ち、完全に私の元から離れて行く。


すると、入れ替わりで傍に来た嶋山成。その顔は、言葉で表すには難しい真剣味を帯びた顔。


「なぁ片岡、お前とルイって本当に転校初日に初めて会ったの?」


「言葉の意図が、良く分からないのですが」


だって、ルイはいつ父が完成させたかは知らないけれど、外の世界に出たのはあの日が初めてだし、私だって初めてその日にルイを見たのだ。なのに、何故そんな質問をするのだろう。


「いや、ごめんな。何となくただ……さっき、懐かしそうな顔をしてるように見えたんだ。片岡も、ルイも」


その言葉は、半分当たっているようで間違っている。


だって、あれは私としては懐かしい行為だったけれど、ルイにとっては懐かしいなんて概念は当てまらないのだから。