【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

その温かな光を帯びた体が私を包んだ。抵抗、しようがなかった。


温かさが怖いと感じた。あの頃の全てが嶋山成を通して私に流れ込んで来そうで、身体中が痛くて堪らない。


普段どちらかと言えばちゃらけた嶋山成だけど、イメージとは裏腹にきっちりとボタンを留められたカッターシャツは品の良い柔軟剤の香りしかしない。


「俺なら、片岡の理解者になる事が出来るのになぁ。あー、もどかしい」


「しまやま、く……」


何も知らないくせに、なんて言えなかった。何故なら、彼は何等かの事を知っていてそう言っているような気がしたから。


綺麗な世界しか知らない筈の彼が、実はそうじゃないかもしれない。


堪らなく彼を欲してしまいそうな自分がいて、でもそれが許される事は無いと警告するもう一人の自分がいて、どうしようもない。


どうして?全て捨てたのに、私には何が残っているというの?


逃げたい。逃げられない。警告の耳鳴りは、止まない。