【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

嶋山成は、ルイみたいに全てが整った美形ではないし、楠本燭のように彫りの深い男前な顔では無い。


染めた髪の毛はやわっこそうな形のショートにしていて、全体的に小さなフォルムの顔の中に、大きな黒目がちの綺麗な瞳が浮いていて、左上がりなアヒル口は、笑うと口角がキュッと上がって頬に長い笑窪がくっきり浮かび上がる。


整っているとは言えないけど、親しみやすく、言葉にするなら可愛らしい顔をしているのだ。


「ねえ片岡、どうしてお前って、いつもそうやって自分と周りを線引きしているような顔をしているの……?」


「……え?」


そして、笑顔から悲しい顔になった嶋山成は、不意に私にそんな事を問いかけた。


情けなく下がった眉。丸っこく大きな瞳は潤んで、夕日に照らされてオレンジ色に染まり、美しく輝いている。


「別に、そんな事は」


「無いとは言わせない。俺は、こんなに近くにいるのにいつもお前が遠いよ」


どんなに否定してもこの綺麗な人には私の汚いところを炙られて、丸裸にされる気がして、怖い。


見ないで。触れないで。そう思うのに突っぱねる事が出来なくて、思考が、時間が、止まる。