【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

光の映像が途切れ、体育館が静寂に包まれた。


「ルイ……ルイ、ルイ、ルイ!」


白い薔薇に包まれ、永い眠りに就いたここにいるルイの名を、何度も呼びかける。呼びかけても返事は無い。


「泣けないよ。だから君が泣いてくれていた。ねぇ、泣いて。悲しい私の代わりに泣いて」


柔らかなルイの頬に触れても、ルイの温もりはもう感じない。鳥の囀りのような綺麗な声も、宝石みたいな茶色い瞳も、もう私には聞こえないし、映らない。


瞼が熱い。視界が滲んで、愛した存在が何も見えない。


指先に、湿り気と熱い温度を感じた。もうそれしか私に感覚を齎さない。でもそれは、ルイの大切な宝物のひと雫だと分かった。


「ねぇ、泣いているの?ルイ、泣けない私の代わりに、泣いているの?」


答えは返ってこない。ただ、柔らかな頬が、大粒の涙で濡れるだけ。


ルイは形を失い、もう私に二度とは触れてくれない。だけど、ルイはこの先も私の代わりに泣いてくれるのだろう。


「あ、あああ……!ルイ、ルイ……!」


瞼の熱は、ルイが泣いて落とすひと雫を、私が代わりに抱き締めて離さないようにしている温度。


先に私の頬と、それから顎を濡らしてルイの頬を濡らすものは、私がルイの涙を独り占めしようと、愛してると叫ぼうとしているひと雫の君の宝物。


ルイ、答えて。君の涙は本物ですか?


聞こえる嗚咽は四つ。成と、里佳子と、燭と、それから……私の。


だけど、泣いているのは私じゃなくてきっとルイ。これは、私の代わりに泣いているのか、はたまたルイの心の涙なのか、何度問いかけても答えは返らない。それでも、飽きるまで問いかける。


ねぇルイ、君の涙は本物ですか?


君の涙は、本物ですか?





R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
【完】