ほんの数ヶ月前の、笑う事さえ出来なかった私と同じルートを辿り、私達五人は京都へと向かい始めた。


「成テメェバナナ食ってんじゃねぇよ!クセーんだよ!」


「今食べんの止めたら臭いままだけどいいの?……って、会話に進歩ねーの。前もこんな話してたよな」


むぐむぐと鼻息を立てながらバナナを完食した成の一言に、あの時とは違い全員が和やかに微笑む。


「根本的に俺達は、こういう小さな幸せに満ちながら生きている。それには誰一人欠けちゃいけないとも思う。ルイ、君もだよ」


成の口の端に残ったバナナをティッシュで取りながら、燭が一定以上に上下しないその穏やかな低音でルイに囁いた。


「そう、だね。ボクも出来ることなら、キミ達と生き続けたい。こうして、下らない会話で笑っていたいな」


「出来ればじゃなくてするんだよ!このネガティブポンコツが!お前はアタシらがキッタネェジジババになるまで生きるんだよ!アホ!」


窓際から私、ルイ、成、通路を挟んだ向こう側に座る里佳子、燭。その並びの座席を隔てる通路等お構いなく叫ぶ里佳子に、ルイは小鳥の囀りのような心地の良い声で喉を鳴らし笑う。


「その為には、リカコに声のボリューム落としてもらわなきゃ。アカリがそのうちその大きな声で心臓止めちゃうよ?」


ああ、ルイがちゃんと笑ってる。それだけで、よく分からない優しい感情がこみ上げて、まだ泣けないのに涙が出そうな気配がした。