「人と同じに例えるなら、機械にだって命はあるんだよ。しかも、アタシらより密な事をする分その灯火っつうのは短い」


私達の中で一番機械に強い里佳子だからこそ、それがどういう事か誰よりも良く分かる。


そこまで話した里佳子は、人よりも少し大きな八重歯で唇を強く、強く噛み締め、やがて唇からは血が滲んだ。


「私達は、ルイと共に生きる為にはどうしたら良いのでしょう?何をしてあげられるのでしょう?」


これから先、自分や周りの命がどれだけ長く続くものかは生きる人全てが分からない事だ。けれど、この命の灯火が尽きるまで、私はその瞬間までルイと共に生きて行きたい。


しかし、その問いには誰もすぐには答えてはくれない。何が解決策かなんて誰にも分からないまま、時間は過ぎる。


「……前倒し、しよう」


「え、と……?」


しばらくして、静かに重たそうに唇を開いたのは、先程声を荒らげた燭だった。


「京都に行く計画、前倒ししよう。ルイの目的が笑里ちゃんの記憶と感情を取り戻させる事なら、早くそこを済ませて、ルイの事を早めに考え始めよう。俺達には、きっとそれしか出来ないから」


苦渋の決断と言ったところだ。もしかしたら、それによりルイを失うかもしれないのに。


でも、誰も解決策が出せなから、その燭の案に乗るように、成も、里佳子もあの計画について静かに話し出す。


私達は何も出来ないのだろうか。ルイの命の灯火のリミットを、延ばす為の何かを。