【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「ねぇルイ、もう君の力を使わなくとも、きっと笑里はちゃんと全部取り戻す。だから、せめて力はもう……」


「ダメ。例えこの能力をあと一回使ったらもう目が覚めなくなったとしても、ボクから、彼女へ返したいんだ」


きっと父のいうルイの力というのは私に触れると泣ける力、それから、あの夢を見せる力なのだろう。


「ボクはずっと傍にいたい。傍で彼女の全てを見て来た。苦しい事も、楽しい事も。お父さんの代わりにだったかもしれないけれど、これはもうボクのもので、エミリに返すものだよ。消したら許さない」


澄み切ったルイの声は、強さを持った優しさでしかなくて、ドアからは表情まで伺えなくとも、ルイがどれだけ幸福そうな顔をしているのか目に浮かぶ。


この想いが、このこみ上げる感情が何なのか分からなくて俯くと、息まで詰まる。


「う……ごめっ、俺、ダメだ。涙が止まらないんだ」


そして、私と同じようにルイの声を聞き、想いを馳せた成は、どうしようもない感情を涙に乗せて、真っ赤な顔をした。


「ルイを失うのが怖い。だけど、ルイの選択した気持ちが分かるから、だから……悲しい」


そうか、私に灯り始めたのは『悲しみ』なのかもしれない。


このちくちくと刺す痛みも、身体中が、心が叫びたくなる衝動も、きっと。