【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

成と夕飯の買い出しを済ませて、成が手伝える料理といえばカレーくらいだからと、私達はカレーを作り始めた。


それは勿論四人分。私達と、ラボにこもり切りの父と、それから、食べる事の必要は無いルイにも。


どんな状況でも、機能的には不要でも、共に食べたい。食事をする事を違った意味で必要としてくれるルイと、共に。


出来上がったカレーは、成の切った不器用な形の肉じゃががゴロゴロと転がっていた。


世界を不器用に、けれども幸せに生きる私達らしいカレーだと思う。


父と、それから目覚めているであろうルイを呼びに私達は地下のラボへと繋がる階段を降りて行く。


以前、ルイは里佳子と燭が持って来た食べ物を幸せそうに食べていた。それはルイが作る側ばかりで他人の料理を食べたのが初体験だったからだ。


成もきっと、あの時のルイを鮮明に覚えていたからこそ、出来ないのに一生懸命手伝ってくれたのだろう。


既存のカレールーから作った中辛のカレーは、可も無く不可も無い味かもしれないけれど、きっと私が作った中で一番美味しい料理に違いない。


だから、目覚めたルイと、たった一人の肉親の父、それから新しい家族の成と私との四人で食べたい。食べて、それから彼の無茶を嫌って程に怒って、また笑えれば良い。


私も成も、その期待と楽しみに胸を弾ませラボの扉の前に立った。


けれど、いつもは固く閉ざされたラボは余程焦ったのか扉が少し開いており、その微かな隙間からは嫌に神妙な空気が流れている。


扉が、叩けない。幸せへと、踏み出せない。