【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「さて、今日の晩飯は俺達で作るぞー!……っても、俺料理なんて家庭科でしかした事ない。笑里出来る?」


「失礼ですね。ルイが料理し始める前まで炊事洗濯は私がしていたんですよ。成の分抜きますよ」


こんな会話が出来るのは、皆のおかげ。その皆の中には勿論ルイがいて、だからこそ、ルイがいなくても普通の会話が出来ている事が、何だか……分からない感情を齎す。


「成、この、胸の奥の空虚と言うか、空虚に蔓延る痛みは、どんな感情なのでしょう?」


「笑里、お前、それ……」


分からなくて答えを求めれば、成は立ち止まり目を見開いていた。


「……いや、自分で思い出すべきだ。その名前を、その感情を。笑里になら、もう自分で出来るだろう?」


私に足りない感情。神様は、あえて試練を私に残して先を行く。


これは何だろう。ちくちくと私の胸の奥の空虚の周りに蔓延り、柔らかいところを刺す痛み。


痛いのに、とてつもなく大切な感情だというのを叫んでる。心が、身体が、忘れている幼い私が、思い出した幼い私さえも。