結局、成が氷を持って来てすぐに私達は二人で体育館に戻った。
私のあの発作のような症状も嘘だったかのようで、身体は何ともなくいつも通り。
「ルイ、大丈夫だよな。ミッキーもいるし、それで応急処置が済んで帰っておじさんが診てくれたら、またいつも通りだよな」
成だって同じように不安なのだ。勿論、里佳子や燭だって。私がルイを求め過ぎると不安を煽る。皆を不安にさせるのはいけない事だ。
「美樹先生も大丈夫だと言ってくれました。きっとバレーボールの事をインプットし過ぎてショートしたのです。ルイはバレーボールをする為に造られた存在ではないのに」
「あはは、そうだね。起きたら『馬鹿だな』って言ってやろう。心配かけた事思いっきり責めてやろう」
成の彩溢れた声は、温もりを齎しぽわぽわと空中を舞う。それは不安をかき消す、神様の声。
微笑んで頷くと、成も頬を染めて眩いばかりの笑顔を返して来た。
体育館に到着すると、丁度私達の女子チームがあと一点で試合に勝つ瞬間。
私と里佳子の穴を埋めているのは、いつか里佳子といがみ合ったあの子と、今小さな社会を牛耳っている里佳子の元親友。
ああ、視野を広げれば、例え彼女達が本当は私達を嫌っていたとしても、それでもいがみ合いながらも支え合っている事が良く分かる。



