【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「美樹先生、今の会話は何だったのですか?」


聞かずにはいられない。とても大切な事のような気がしたから。私だけ蚊帳の外ではいられない。


しかし美樹は、またいつもの無気力な瞳で私を少しじっと見つめると、黙ったままルイに向き直りまた整備を始める。


「美樹先生」


「笑里、お前が今考えるのはルイの事じゃなくて自分の事だ。何が起きたかは聞くな。俺や片岡博士がいるからルイは大丈夫だ」


これ以上聞くなと遠回りに牽制された。でも、美樹の言う通り私がじたばたしたところで何も変わらないし、父や美樹が専門家なのだから任せるのが一番だ。


「それでは、今は聞きません。でも、ちゃんとルイに問いただします。ルイが大事だから知らないふりなんて出来ません。ルイが話すのが嫌だと言ったら考えるのは止します」


それが、里佳子が泣く程の出来事が本当だとしたら受け入れられるか、正しい選択かどうかは今は考えられないけれど、私はルイに寄り添って傍にいたい。彼がそうしてくれたように。


ルイと私が運命共同体であるというのなら、私が彼を求めるようにまた、彼も私をどう足掻いても求めているのだから。