三学期に入っても相変わらず、学校の教室の中という小さな社会は、小さな駆け引きと小さな決まり事が狭い空間に張り巡らされていた。


「なんつーかこう、窮屈な空間にいるよな、アタシらはさ」


「言ったって現実は打破出来ないだろう?作り話じゃないんだからさ、人の一生なんかその窮屈な中に小さな幸せを見つけた人が勝っていくんだから」


燭は私達と同い年なのに、いつもやけに哲学的な事を言う。思えば、燭はこうも毎日同じ時間を共有しているのに幼さを感じた事が無い。


「ねぇ、アカリみたいなヒトの事を、所謂『ジジくさい』って言うの?」


里佳子と燭の会話を相対性理論の本を読みながらも聞いていたらしいルイは、悪びれも無く純粋な透きとおった瞳を向けて尋ねる。


そんなルイに、ほんの少しの沈黙後、里佳子が「ふは」と息を吐くように吹き出した。


「あー、やっぱ訂正。アタシの知ってる中で可能性無限大過ぎて窮屈感無い生き物いたわ」


「そうだね。世界は広いよ。俺達ルイの友達なんだもの」


それは、ここまで高性能なヒューマノイドロボットが目の前にいる事を指しているのか、はたまた心を持ったヒューマノイドロボットである事を指しているのか……否、ルイという生命体自体を指しているのだろう。


ルイは、そんな二人の会話にゆったりとしたテンポで一つ、瞬きの星を落とした。