【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「成のお兄さんが戻って来るまで、この家で君には生活して頂きます」


「は……は!?何言ってんの?そんなのあの人が許すわけ」


「君の母親が許さなくても、君の父親は許しますよね?家も部屋はこの通り有り余ってます。心配はいりません。ルイも同じ考えだし、父だって私が説得します。だから」


こんなに言葉を捲し立てるように並べるのは生まれて初めてかもしれない。息が上がる。人を守るのは、それだけエネルギーを使う。


それらを成は、ずっと私にしてくれていたのだ。だから。


「……だから、もう一人で苦しまないで下さい。もう傷付く選択をしないで下さい」


私だって手を差し伸べたい。汚れた手かもしれない。この方法が解決には導かない事も分かっている。成が元々下した結論は逃げでしかないし、私の提案だってその逃げの選択肢までの気休め。


それでも、逃げる事が、解決しない事が間違いだとは思わないから、私は彼を救えなくても救われる未来まで汚い手で守りたいのだ。