そのギャップに戸惑う私に、成はどこまでも柔らかい光を浴びせ、慈しむような口調で話を続けた。


「俺ね、悔しかったんだ。初めて出会った時、こんなに綺麗な人に何も無いのが悔しいって泣いたんだ。それと同時に、見たくなった。その人の笑う顔も、怒る顔も、泣く顔も、全部。俺のちっぽけな一生を差し出しても構わないと思ったんだよ」


一ミリも嘘偽りの無い、まっすぐ訴えかける成の黒い瞳は困惑する私をその瞳の中に捕らえて離してはくれない。


「笑里、お前はあの日から俺の神様だ。お前の全部の表情が、俺の生きる希望だよ。大袈裟じゃなくて、あの日から確かに俺の人生はそうなってしまったんだ」


あの日、あの白い箱の中で神様と出会ったのは私だけじゃなかった。こんな私でも、あの日から誰かにそう思われていたなんて。


「成……あの日から私の神様は君です。何色でもない私にとって、君はあまりにも彩で溢れていた」


今だってそう。彼はいつだって拾う神様で、私に与えてくれる神様なのだ。


「そ、か……俺も、少しは笑里の今に貢献出来ていたのかな」


「勿論です。成がいなければ変わるきっかけは生まれなかったのですから。高二になるまでずっと君を忘れていて、ごめんなさい」


でも、忘れていても君は神様だった。何度も転がり落ちる不要な歯車に自らなろうとしている私を、成はいつだって拾い上げてくれた。