神様は伏し目がちに微笑んでいた。窓際の光を思う存分身体中に吸い込んで、キラキラと、光達を操って。


「事件の後、父親の務める病院に入院してたんだ。外科病棟だったけど、カウンセリングを受けてたから、身体が動くようになってからは精神科の病棟を良く彷徨いてたんだ」


ほんの二年前の話だと言うのに、昔を慈しむように成は話す。


その伏し目がちの表情は、それらが成にとって美しい出来事だと言い表すような柔らかなものである。


「あの事件は俺にとって結構ショッキングなモンだった。事自体ってより、あの人を守った父や兄の姿がね。俺もあの人はどんなんだって母親だから愛してるけど、俺より母が愛されてる事を、十四で知る事になったんだから」


ああ、きっと絶望だっただろう。ずっと自分だけに降る不条理に耐えて、その最果てに絶望があって、怒りすら失った成の気持ちは誰にも共感出来なかっただろう。


「俺、この世界は不平等で残酷だと思った。俺なんてきっと、一生独りなんだって思ってた」


少し前の私と同じだ。どんな小さな物でも拾い上げる神様も、ほんの少し前までは、世界の外から傍観する人だったのだ。