幼い私は感情も無く、ただ、声という機能を使って問へと答える。


「温かな人を殺しました。ただ一人の大切な肉親を理由も無く殺しました」


「そう……かい」


男の人は否定も肯定もしない。おそらく、否定すればこの状態の私がどうなるのか予想出来ないし、肯定してしまえば嘘をつく事になるからの判断なのだろう。


『チ、ガ、ウ、ノニ……』


淡々と進む目の前の光景よりも近いところで、機械的な音がゆっくりと刻まれた。


『ソバニ、イテ、クレタ、ダケナノニ。エ、ミ、リ、マモッテ、クレタ』


必死に、必死に音が訴えかけるも届かない。それは機械的な音でしか無いのに、確かに、今の私の胸の奥に熱を灯す。


『ソバニ、イルヨ。コンドハ、ボクガ、キミノソバニ……』


ねぇ、声の主は君なの?ずっと傍にいたのは君なの?お願い、答えてよ。


そうすれば辻褄が合う。断片的に見る夢も、君に感じる安心感も、全部。


ああ、苦しい罪も全部、知れば君に伝えなければ行けない事が分かるのかな。


だったら、早く現実に戻って知らなくちゃ。思い出さなくちゃ。自分の為じゃなく、君の為。