【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

里佳子を連れて出て行った燭の肩幅の広い背中を見送った成は、ふっと微笑み立ち上がる。


「俺も一旦帰るよ。着替えなきゃ」


まだ回復しない身体でふらりと一歩踏み出す成に、意識的に手を伸ばした。この人を行かせてはまずい。そう危機感を覚えたから。


だけど、私の手より先にぐいと引き戻す白く繊細な造りの手が伸びたのが見え、引っ込めた。大丈夫、一人じゃない。私にも、成にも引き留めてくれる存在がいる事を再確認させられる。


「行かせないけど。このまま帰したら騒ぎに乗じてまたナルが傷付くのは目に見えているでしょう?まぁ、頭の良い人ならここで大きな騒ぎにしたら自分が今度こそ罪を認める事になるのは分かってるだろうし、きっと警察沙汰にはなってないよね?」


「……はは、全部お見通し、か。それはヒューマノイドロボットだからってより、お前の心の質なんだよなぁ、きっと」


間髪を入れさせぬルイの言葉と強い眼差しに観念した成は、何とか入れていたらしい力を緩めて座っていた椅子へすとんと座り込む。


「父親にだけ連絡させて。一応、あっちと話し合わせて一緒にいた事にすれば殴られんのは免れるから。今スマホ無いから、電話貸してよ」


一人でずっと傷付きながら戦って来た、なのにずっと人々が落ちぬよう拾って来た神様を、私達が守らなくてはいけない。


ボロボロの身体と、悲しい色を紡ぎ出す笑顔すらも、失ってしまう前に。