【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「俺ね、母親に虐待されてんの。いつからって聞かれると分からないくらい前からずっとね」


あまりにも柔らかなタッチで語られた言葉は、予想通りの残酷な物。


「あの人は人当たりは凄く良いの、基本的に。そうしないと嫌われるって、どういう経緯か分かんないけどそう思ってるらしくてね。その反動で、結構な頻度でヒステリックになって俺に当たるみたい」


まるで人事のようにすら聞こえるように話す成は、無理して普通に話しているというよりは本当に穏やかな心持ちで話しているように見えるから、きっとまだ大丈夫。


「父も兄もあの人には表面的にあまり感心が無くて。でも、そういう人に愛してもらえるように頑張るのがあの人の美徳みたいなところがあった。……だからかな、そうじゃなかった俺が気持ち悪くて、ストレスのはけ口にしているんだよ」


物心つく前からずっと虐待を受けていた成は、きっと我慢から心をぎゅうぎゅうに押し込まれて、それが『怒って良い事』だという感覚を麻痺させられている。


そして麻痺させられた果てに失ったのだ。その感情すらも。


「……そうして続いていた出来事がしばらく止まったのは、二年前、俺が中三の時に起こったある事件からだ」


ここからは、私に関わる事も含まれるだろう。ルイが口を噤んだ、成の過去。