下に降りると、ラボから出て来たままのモサモサの父が先に朝のコーヒーを飲んでいた。


「おはよう皆」


父は何も聞かない。私を引き取った人同じ。あの日も、罪を犯した私に対してただ微笑み、私の手を握って引いた人。


成はそんな父に、ヨロヨロと燭から離れ独立したかと思うと、勢い良く頭を下げた。


「わわ!びっくりしたぁ。頭上げてよ。せっかくの朝食だよ?美味しく食べよう。ルイのご飯は美味しいよ」


先程のルイと似たような事を言う。やはり、この人が造り出したルイは、根本が父とそっくりだ。


成は頭を下げたまま、息を詰まらせぼたぼたと雫を落とした。その雫にはどんな想いが詰まっているのだろう。息も出来ないくらいに身体中に詰めた想いは、どんな物なのだろう。


燭が泣き止まぬ成の背中をとんとん叩き、机へと促す。


各々が、各々心にその零した物の重みを感じながら、ルイの美味しい朝食を口にする。


沈んでいても、もやもやが腫れなくても、ルイの作ったご飯はどうしようもなく美味しい。


間違いながらも一つ、何か変わった気がする朝に空っぽな身体を満たすご飯は舌の上で柔らかく解けた。