【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

その流鏑馬の弓を引く繊細な造りの指先で、燭はそっと門に付いたチャイムを鳴らす。


《はい、どちら様ですか?》


機械から流れて来たのは中年の女性の声。おそらく白い箱の住人、成の母親だろう。


「あの、俺達成君の友人です。昨夜から成君と連絡が取れなくて、体調不良かと思ってお見舞に来たのですが」


皆がまだざわざわと心を乱している中、燭はそれを表面に出さないでいつも通りに一定の低音で外付けのチャイムに話しかける。


《少し、待ってて貰えるかしら》


機械は人当たりの良さそうな中年の女性の声を掻き鳴らし、やがて静かになって私達を乱すのを止めた。


「嫌だ、冷たい、寒い」


「何なんだよルイ、さっきから。ロボットのくせにどうした?とりあえずこれ被れ。わけわかんねぇよ」


あからさまに一番怯えているルイに、自身も乱されながらも少し冷静な里佳子は、ルイに乱暴に自分が被っていたニット帽を深くかぶせ、肩を叩く。


そうしているうちに、白い壁の奥から小柄な女性がやって来て、門をそっと開いた。


「せっかくお友達が来てくれたのにごめんなさいね。……あの子、調子が悪くて寝ているの。お茶でも飲んで行く?」


成と同じくりくりの瞳に、微笑んで伸びた笑窪を持つその女性。


声と同じで人当たりは良さそうな、良い母親に見える。けれど、成と同じ顔だけど、明らかにこの人は違う。


瞳の奥が笑っていない。全身で私達を拒否しているその目が、貼り付けられた笑顔が……私が殺したあの人に重なった。