私の額に掌を乗せたままだったルイは、私を真っ直ぐ見つめたまま、動きを止めてしまっている。


「ルイ……?」


「おかしいな。ボクには心臓なんて無いから、上がるはずが無いのに。肺も無いから、それが上がるのもおかしい、のに」


目線は逸らさず、だけど、嫌に人間臭く頬を蒸気させたルイは、瞳からほろほろと輝く粒を落としたまま、整った小さな唇を震わす。


「ボクの身体の中には機器しかない。なのにエミリ、これは何?この部分の奥がぎゅうっと絞まる心地良い痛みは何なの?痛みがもたらす熱と、呼吸の早まりは……ボク、故障しているのかな」


苦しそうに、だけど、ただ苦しいのとは違うような甘さを持ったルイの声が、私の耳元で揺らぐ。


何故耳元に、と考える暇もなく、私はルイに弱々しく抱き締められているのだと理解出来た。


「ボク、ヒトの気持ちをそれなりに勉強したつもりなんだけどね、キミへ抱く想いだけは、表す事が出来ないんだよ」


甘くて、切なくて、線のぼやけたルイの声が、せっかく薬で下がった熱を呼び覚ますよう。


私も同じだよ、ルイ。突然現れた君を、身体の一部のような、他の人とは違う大切な想いで見ているんだよ。だけど、その答えは私にだって分からないんだ。ごめんね。