【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

そんなルイの視線の先には、まだ成と燭の姿が映っている。美しく大きな瞳だから、それが何となく分かるのだ。


「ねぇ……やっぱりおかしいと思わない?」


「アン?何が?お前主語が無いから良くわかんねぇよ」


ルイは背筋がピリピリするような鋭い視線で二人を、いや、成を見つめたまま、しかし無表情に唇だけ動かした。


「ボクを通常の人間の視力と一緒にしないで。ボクには見えてる」


「だから、何がだよ」


その威圧感に気圧されつつも質問する里佳子もまた、成の方へと視線を移した。


私はルイの瞳から目が離せない。何か、とてつもなく嫌な予感がする。


「ナル、塞ぐように肌色の何かで耳を覆ってるんだ。髪の毛で隠れてるけど、ほんの数ミリの隙間でもボクには見える。おそらく、相当な出血をしたんじゃない?更に耳がまだ聞こえにくいと本人が言っていた」


瞬きもせず、機能の殆どを目に集め、私や近くにいる里佳子に届く範囲の微弱な機械音を鳴らし、ルイは唇を動かし続ける。


「ねぇ、人は耳があんな状態になるまで気付かずに耳掃除をするものなの?」


それは、ヒューマノイドロボットのルイだから出る疑問では無さそうだ。


そんなの、成の耳の状態に気付いたら誰だって思う事だろう。そんな状態になった理由等、耳掃除でない事は確かだが、すぐに浮かびはしない。