【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「数学の答え合わせしたいから答案見せてくれるかな、成。あれ、おーい、成くーん」


気を取り直してと言わんばかりに数学の答案を握り、珍しく自分の席で静かにしている成へと燭が話しかける。


しかし、成は無反応で教科書と何かの答案を見比べているよう。いつもなら、どんなに集中していても声をかけられれば顔を上げる成にしては珍しい。


「成ー?君、そんなに集中力あったっけ?」


仕方なく成の席の前まで行った燭が成の顔を覗き込むのが見え、その後すぐに成が肩を震わせて椅子を派手に倒して立ち上がるのが見えた。


あまりの物音に、私達どころかクラスメイト全員の視線が集まる。


「わ……ごめんごめん!実は昨日耳掃除してて深追いしたっぽくて右耳聴こえ悪いんだ。急に目の前にイケメン飛び込んで来たから思わず乙女になっちゃった、はは!燭も皆もごめんね」


えへへ、と笑い椅子を直す成に、クラスメイトも各々笑いながら視線を外して行く。


「大丈夫?一応耳鼻科行っときなよ」


「おお、ありがとう!燭は優しいなぁ」


いつも通り曇り無く笑う成は、形の良い丸っこい柔らかそうなマッシュショートの髪の毛をくしゃくしゃと掻いているのを確認し、大した事は無いのだろうと私も視線を外した。


「アイツ馬鹿だわ。どうせ馬鹿だから勢い良く耳かき突っ込んだんだろ?」


「全教科赤点ギリギリのリカコにバカ扱いされるナルって可哀想」


また余計な一言で里佳子を怒らせて、痛覚が無いとはいえ頭をグリグリされるルイには、ロボットのくせに学習能力が欠けているのではないかと疑わしく思ってしまう。