朝から複雑な心境のまま学校へと歩いて行くと、珍しく、こんな時間に成の姿を靴箱で見つけた。何故かジャージ姿の。


「おう笑里、ルイ。成ちゃん朝から疲れたよぉ」


「植物の匂いと少量の土の匂い……ナル、一体何の罰則受けたの?」



「ちょ、酷くね?罰則じゃないから!美化委員の仕事で花壇いじりしただけだからね!」


そういえば成は部活に入っていない代わりに美化委員をやっている。ちゃらけた性格ではあるが基本真面目な彼は、おそらくサボりの多い委員会活動もこうして真面目に定期的に参加しているのだろう。


「その真面目さがもう少し勉強に向けば学力もマシになりそうなのに勿体無いです」


「うお、辛辣ぅ。人には向き不向きがあるんだって」


そう言って笑う成だけれど、やれば勉強も出来るだろうというのは事実だ。


だって、成は期末中間のテストで追試にだけはなった事が無い筈。同じクラスになったのは今年からだが、この数ヶ月、そんな話を聞いた事が無い。


おそらく彼には勉強という物が、生きて行く中でそんなに重要な事では無いのだろう。