【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜



あれから着替えて寝て、再び目が覚めたら、やはりルイはもういなかった。


準備を済ませてリビングへと向かうと、ルイは相変わらずに良い匂いの朝食を用意して既に父とティータイムを楽しんでいる。


「おはようエミリ。あれ、珍しいね。寝癖が治っていないよ」


「煩いです。それなら結ぶので平気です。ルイは相変わらずどんどん女子力が上がりますね。最早このオシャレな料理がどんな名前かも分かりません」


無表情同士のいつもの会話に、珍しい事に小綺麗に髭を剃った父が楽しそうに笑っている。


「最近たのしそうだね。笑里もルイも」


楽しい、というのが正しい表現だとは思えないが、確かにこの毎日が心地良いと感じている。それと同時に、罪が重くなる。母親を殺した過去が、誰に責められるでもない幸せに溺れる自分がいるのに気付いてしまう。


私のような汚い罪人でも友だと言ってくれる大切な友を失ってしまう日がくるかもしれないことが、今は一番怖いのだ。