【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜



ルイが生まれて来てから、私は良く夢を見るようになった。


以前見た夢の時より幼い頃の身体の私は、やはり傍らにあの小さなおもちゃのロボットを抱えており、愛おしそうに目を細めている。


そんな少女の幸せは、突然やって来た大人に奪われてしまう。


「こんな物大事そうにするな!こんな物!」


「嫌ぁ!嫌!嫌!止めて……お母さん!」


優しかった筈の母。私が殺した母。こんな姿は記憶に無い。私が殺した事への理由を付ける為に見せている夢なのが良く分かる。


その母の顔をした化物は、私からおもちゃのロボットを奪い取ろうとし、幼い私は必死にしがみついて離さない。


「離せ!そんな物、今すぐ壊す!」


「嫌だよぉ。ねぇ、止めて……!痛い!」


泣き叫ぶ私を、母親の身体をした化物が一心不乱に蹴り付け、踏み付け、痛め付けている。


喜びの感情しか知らない私は、それに対して何も思わない……筈なのに。


ふつふつと、まるでお湯が鍋の中で温まり吹きこぼれを起こす過程のように、腹の底から熱が生まれる。


左の胸の奥がそのふつふつで焦げてしまいそうな程。これは、これは、これは……。