【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

最近ルイは、ヒューマノイドだという事を忘れてしまいそうな程表情を持っている。


どういうシステムなのか私には分からないけれど……いや、もうシステムなんてものは飛び越えて、ルイは一つの生命体となり、自我を持ち始めているというのが至極自然な考え方なのかもしれない。


修学旅行の時美樹がルイは心を持つ事を目的としたヒューマノイドロボットだと言っていたが、いざルイからすれば、その事実は少し違和感があるのだろう。なんせ、彼は良く出来ているが彼自身からすれば自分はロボットなのだから。


それを踏まえて、ルイの疑問に答えられる私の答えは一つしか無い。


「それは君の意思で、君の心です」


「ボクの意思、ボクの、心……」


ルイは命を持って数カ月で、ぐんぐん吸収し、自らで噛み砕きそれをモノにしているのだ。


それを彼自身はまだ気付いていない。その証拠に、左胸に手を当てて、ヒューマノイドらしいというのが正しいのか、微かな機械音を上げて私の言葉を分析している。


「ボク自身から生まれるものなんてあるのかな。ボクは君達人間とは違う」


自身が言っている言葉に納得の行かない顔をしているのがその証拠なのに、ルイはそれを受け入れない。


「なのに……ここにはボクを形成する部品の一部しか無いというのに、どうしてここに感覚を感じるの?ボクはこれの正体が分からない、分からないんだ」


初めてルイと出会った時、ルイがこんな顔をするなんて絶対に思わなかった。


苦しそうで、切なそうで、なのに、形容し難い綺麗な顔。