【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「……笑里ちゃん、もしそれだけじゃなくて、そうだったとしたらなんだけど、その事に気付いた時に、さっきの俺への質問の答えが出るかもしれないね」


「燭は難しい事を言いますね。それとかそうだったらとか、よく分かりません」


本当にそう思って返したのに、燭はその答えに困ったようにまた笑うと、書き終えた日誌と鞄を手に取った。


「誰も傷つかない未来があれば良いのにって思うんだけど……難しいな、色々。じゃあ、またね」


「あ……はい、また」


最後の言葉は何に対して言った事だったのだろう。燭は色々考え過ぎていて、本質的に理解する事が出来ない。


燭が教室をでていくのを見送り、ずっと黙ったままのルイの方を見ると、ルイも私の事をじっと見つめていた。


「ねぇエミリ、どうしてボクはアカリに対して『怒った』の?」


「おこ……った?」


そうだ。ルイのあの表情、あの声、あの言葉を感情に表すとしたら『怒り』なんだ。


私がまだ取り戻せていない感情。ルイは、それをもう持ち始めたの?