刺がある花のような少し危険なのに気を引く音をした里佳子とも、空間を彩るような鮮やか声の成とも、鳥が歌い囀るようなルイの声とも違う燭の声は不思議な声。
「何だか落ち着きました。……ありがとう」
「良かった。笑里ちゃんは変わったね。ありがとうを言えるようになった。言える人なんだから、取り戻せるさ。その想いの正体も」
まるで子供相手のような声色の燭は、緩やかに弧を描く瞼を眼鏡の中に作り上げ、肩を摩っていた掌で私の頭をそっと撫でた。
いつぶりだろう、人にこうやって頭を撫でられるなんて。
左の胸の奥が温かくて、やけに嬉しい。ああ、私は独りじゃない。私を許して受け入れてくれる人はいるんだと実感する。
「ちょっと、何してるの?アカリ」
そんな穏やかで温かな空間の中に、『鳥の歌声』が響き渡った。
「ルイ?先に帰ったと思ってた。どうしたのですか?」
視線を送った先のルイは、ふわふわとした色素の薄い髪の毛とは裏腹に、その大きな猫目に造られた瞳を鋭くして私達、いや、燭を見つめている。
「ルイ?」
「エミリに触らないで。どうしてかボク、凄く今昂っている。ボク不具合でもあるのかな」
何とも人間臭い表情のルイは、早足でこちらへ来ると、私の背後に回り込み、ブレザーの裾を引っ張って自分の胸に私の背中を引っつけるような形を取った。
背中に当たる本物みたいな体の左側がちょうど私の耳の近くにぶつかって、本物みたいな胸の鼓動が鼓膜まで届くようなそんな気がした。
「何だか落ち着きました。……ありがとう」
「良かった。笑里ちゃんは変わったね。ありがとうを言えるようになった。言える人なんだから、取り戻せるさ。その想いの正体も」
まるで子供相手のような声色の燭は、緩やかに弧を描く瞼を眼鏡の中に作り上げ、肩を摩っていた掌で私の頭をそっと撫でた。
いつぶりだろう、人にこうやって頭を撫でられるなんて。
左の胸の奥が温かくて、やけに嬉しい。ああ、私は独りじゃない。私を許して受け入れてくれる人はいるんだと実感する。
「ちょっと、何してるの?アカリ」
そんな穏やかで温かな空間の中に、『鳥の歌声』が響き渡った。
「ルイ?先に帰ったと思ってた。どうしたのですか?」
視線を送った先のルイは、ふわふわとした色素の薄い髪の毛とは裏腹に、その大きな猫目に造られた瞳を鋭くして私達、いや、燭を見つめている。
「ルイ?」
「エミリに触らないで。どうしてかボク、凄く今昂っている。ボク不具合でもあるのかな」
何とも人間臭い表情のルイは、早足でこちらへ来ると、私の背後に回り込み、ブレザーの裾を引っ張って自分の胸に私の背中を引っつけるような形を取った。
背中に当たる本物みたいな体の左側がちょうど私の耳の近くにぶつかって、本物みたいな胸の鼓動が鼓膜まで届くようなそんな気がした。



