【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜




今日は珍しい人と二人きりの時間を過ごしている。


日直が回ってきた私と彼は、夕日が支配する教室で黙々と日誌を書く。


目の前の、艶のある黒髪短髪を夕日に輝かせる彫りの深い青年は、同じ男子なのに成のような等身大の魅力とも、ルイのような儚さとも違う落ち着きが滲んだ大人びた人。


「笑里ちゃん、どうしたの?俺、何かついてる?」


「いえ……燭は落ち着いてるな、と思いまして」


私の答えに端整な顔をくしゃりと歪めて微笑んだ燭は、これまで大人しく気味が悪いという色眼鏡で見られていたとは思えないほどに良い男だと思う。


女子が掌を返すように黄色い声を上げるのも、里佳子が長年の付き合いがあってもあんなに赤面する理由も良く分かる。


しかし、燭のような頭の良い人物が、自分のせいで里佳子の状況が悪くなっている事に気付かない訳が無いのに、どうして無言を貫くのだろうか。


「やっぱり……何か俺に言いたい事があるんじゃない?」


ほら、私のほんの少しのモヤさえ見過ごさない燭が、気付かないなんておかしな話。