そして、この恋心というものは、ヒエラルキーすら揺るがす大きな事件を巻き起こすきっかけとなる。


燭の流鏑馬を観た次の日、教室は私とルイが登校して来た時にはずいぶんと違った風景に様変わりしている様に感じた。


実際は、ただ、教室のど真ん中の席の里佳子が一人でスマホを弄っているというだけなのだけれど、それが私には異様で堪らない。


「ねぇ、これ、何が起こっているの?」


「私にも事情が良く飲み込めてません……」


その異様さに、ルイが人間臭い、眉毛を寄せたしかめっ面を私に向ける。


里佳子が朝、誰にも囲まれず一人で過ごす……それが、どれだけ均衡を保っていた世界におかしなものを巻き起こしているのか、ルイにも理解出来るということ。


スクールカーストと言うのが正しいのか、ヒエラルキーと言うのが正しいのか、とにかく今まで、その頂点に座っている里佳子に必死にしがみつく一段下の女子達が上層部、上手く会話を交わすのが中層部、会話を許されないのが下層部という暗黙の決まりがあったのに。