【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

「それに、ほら。キミが泣かないから代わりに泣く人が、今はもうボクだけじゃない」


ルイのあまりにも人間じみた言葉に、私ははっとして振り返る。


あんなに怖かったのに、振り返った瞬間にはもう何も考えていなくて。


振り返ったら、まず里佳子のぐちゃぐちゃの涙顔が目に入った。


「馬鹿……!んなことお前、うっ!ひっ……ア、アタシらなんかに、腹括って話してんじゃねぇよ!辛いだろ!隠しとけよ、ってか、忘れちゃえよ……」


どうして、涙の理由はこんな汚い私を想う涙なのだろうか。


その隣の楠本燭も、眼鏡を持ち上げてカーディガンの裾を目に押し付けて震え声を上げる。


「クソ……俺は最低だ。片岡さんがどんな気持ちで今までいたか考えもせず、着いて来て言葉も浮かばないよ」


それは私ではなく、自分に対する蔑みの罵倒。必要の無い罵倒。


そして……一歩後ろで私達全員を見て、表情を浮かべずサラサラと涙を流す嶋山成が最後に写る。


「知ってたのに、片岡の口から聞くと辛いよ。お前がそう思ってたんだって本人の口から聞くと、辛くなる」


嶋山成は、一体何を知っているのだろう。彼の涙は、私の知らない私を知った人の、優しい涙。