【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

遅れて席に着くと、嶋山成がニコニコと頬に笑窪を落として笑いながら、私のことを見ている。


「嶋山君、何か?」


「ん?いやね、今日の自由時間、俺達も片岡についてこーって思ってて」


それは、朝から里佳子が言った言葉と同じことで、私は戸惑いを隠し切れない。


「里佳子にも言われましたが、それは……」


「片岡が嫌って言っても俺達を止める権利無いよ。だって、自由時間は班行動原則だし?」


新幹線でバナナを食べるわ、女子の部屋に普通に入るわで修学旅行で決まり事なんて殆ど守らなかったくせに、そんな都合の良い時だけ持ち出すなんて、ずる賢い。


「どうせ、自分のこと知られたくないからとか思ってるんでしょう?俺達が着いてくって決めたんだから、知ったって誰も片岡を孤独に蹴落としたりしない」


「でも」


「片岡はもしかしたら自分には感情なんていらない、とか思ってるかもだけど、知られたくないと思ってくれてる時点で、俺達のこと大切だって思ってる証拠。そういう感情がある証拠でしょ?だから、俺達だって片岡を大切にする」


いつの間にか、嶋山成一人の視線から皆の視線に変わっていた。


どうして、ここにいる人達は、皆私にこんなに優しい視線を向けてくれるの?


どうして、私を大切にしてくれようとするの?


どうして、いつの間にか私はこの人達を大切だと思ってしまったの?