私の声に、美樹は初めて視線を上げる。その顔には、不気味なほど下手くそな微笑みを携えて。


「それは俺から言わなくても、そのうち分かるんじゃない?お前達なら」


それだけ言うと、ルイの背中から充電用のコードを引っ張り出し、プラグへと差し込む。


「どうやらエコモードと急増で付けた自家発電でずっと熱を貯めてたらしい。そのうえ急に大量に動力使えばヒートもするわけだわ。自家発電は取ったから明日もここで充電するようにルイに言っといて。じゃー」


つらつらと言葉を並べた後、嶋山成の頭をバシンと強めに叩いた美樹は、アタッシュケースを持って颯爽と歩き出し、とっとと私達の部屋から出て行ってしまった。


ルイの整備にかかったのはほんの十数分。それも、私達と会話をしながら。


あの男は本当に一体何者なのだろう。今、きっと全員がそう思っている。


「うわぁ、もうわけ分かんね。ってか、最後のなんて無駄な暴力だよ」


ぽつんと呟いた嶋山成の間抜けな一言は、いつもなら里佳子かルイが突っ込むところだけれど、それすら誰も触れられないでただただ美樹が去った後のドアをしばらく見つめるしか出来なかった。