機器の整備をさっと終わらせて、人工皮膚を被せ始めた美樹は、変わらず私達に視線を向けることは無い。


「俺がラボのチームにいた頃の目的は、人工知能から感情に似たものを自分で学び生み出すヒューマノイドの発明が目的だった。つまり、造りは機械仕掛けのロボットでも、心は人間と同じように出来る存在を、ということだ」


もう、人間は自らでそれを造り出せる程に進化させている、ということなのだ。


SFの世界でなく、現実に。しかも、ここまで人間に寄せた見た目で。


「でも、研究は打ち切り。まだ俺達にはそのようなヒューマノイドを生み出すには手に余るという上からの抑制でな」


「それは、自我を持ったヒューマノイドロボットを生み出し、それらが自我を持って俺達を攻撃して来た時に、適わないからですか?」


「ああ。燭は頭の回転が早くて助かる。その通りだ」


話している間にも足の整備を終え、ルイを抱き起こし背中を開き全体のチェックに入る美樹を見つめ、疑問が更に膨らむ。


「それなら、今ここにいるルイは、何故……」


研究は打ち切りになった。じゃあ、父は何故それでも、ルイを生み出したの?