「なっくんじゃない?」


よく行く駅前の本屋さんで色々と物色していると、突然声を掛けられた。


振り向くとーーー


「ナルちゃん、一人?兄貴は?」


「うん、さっき駅で別れた所。みぃくんは電車に乗って先に帰ったよ。」


僕の日頃より低めのテンションが10%上がった。


「そうなんだ、何か探してるの?」


「えっ、うん、まぁね。なっくんは?」


「僕?えっと………」


キミがこの本屋さんによく立ち寄るのを知ってて、もしかして偶然に会えないだろうかと期待しながらここに来てるんだよ。


なんて正直に言ったらキミはどんな顔をするのだろうか。


「あっ、もしかして就活用に?私もさっきSPI系のとかちらっと見たんだよ。いいのがあったらみぃくんに教えてあげようと思って。ってデキの良いみぃくんにお節介だよね。」


と、気まずそうに僕の目の前で苦笑いをするキミ。














キミは悪くない。


悪いのは兄貴だ。


キミにこんな思いをさせているなんて。


いや、僕もか。


キミの真っ直ぐなその思いを知っていながら、キミへの思いを止める事のできない僕も相当、質が悪いようだ。


「兄貴、確かに僕よりデキは良いけど、一般常識全く無いからね。面接の受け方の本とかの方が良いんじゃない?」


「本当よね?先ずは黒髪にするカラー買ってきてあげたほうが良いわよね。」











キミが誰のために目を輝かせて話そうが、キミが誰を思いをその白い頬を赤く染めようが


僕は構わない。


今のこの一瞬だけでもその笑顔が僕に向けられているのであれば………


僕はーーー


ーーーー彼女に恋をしているんだ。