「川上君は、亜耶を狙っているわよ」


真剣な表情でそう言う栞理に、あたしは「へ?」と、キョトンとして聞き返した。


「たぶん、亜耶もその気になってると思う」


あたしの思考回路が追い付かないまま話を進める栞理に「ちょ、ちょっと待ってよ!」と、あたしは口を挟んだ。


川上君は亜耶狙い?


亜耶もその気がある?


全く、意味がわからない。


「栞理はどうしてそんな風に思うの?」


そう聞くと「昨日、一緒に帰っているところを見たから」と、躊躇なく返事をされた。


「どうせ嘘でしょ? 亜耶は昨日あたしと一緒に帰ったもん」


あたしは呆れてそう言った。


恋敵を騙すなら、もっと上手な嘘をつかなきゃ。


そう思って部屋を出ようとすると、栞理が後ろから声をかけてきた。


「証拠がある」


「え?」


あたしは立ち止まり、振り返る。


すると栞理がスマホを持ってニヤリと笑っていたのだ。