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家の表札には増田と書かれていた。


聞いたことのない苗字だ。


栞理の知り合いの友人らしいけれど、面識はゼロに等しい。


栞理は玄関の前で一呼吸を置いてから、チャイムを押した。


さすがに、よく知らない相手の家を訪ねるというのは、栞理でも緊張している。


チャイムを押してしばらく待ってみると、玄関に出てくる足音と人影が見えた。


栞理はピンと背筋を伸ばし、少しだけ笑顔を浮かべた。


第一印象を大事にしているのだろう。


あたしも、できるだけ姿勢をよくして自然な笑顔を作った。


ここで追い返されてしまったら意味がない。


「どなたですか?」


奥から聞こえてきたのは女性の声だった。


まだ若い。


「初めまして。増田君の友達の岡田です」


「古川です」


栞理に続き、慌てて自己紹介をする。