ワケあり彼女に愛のキスを



怒鳴るように言う女を見ながら、〝自分に都合のいいように捕えて勘違いしてるのはそっちでしょ〟そう言おうとして、ピタリと止まった。

目の前にいる女に言ったつもりの言葉が、なぜか自分自身に向かってきているような気がして……最後まで言えなかった。

〝自分に都合のいいように捕えて勘違いしてるのは〟
自分の声に乗った言葉に、ぎくりと心臓が嫌な音を立てた気がした。

それを言われるべきは、まるで自分のような気がしてしまい……それ以上言葉が続かない。
秀一との関係に、言われている気がしてしまって。

『気付けよ、いい加減。現実見ろ』
『少し、現実見ろよ。ちゃんと自分と菊池の関係を客観的に見た方がいい。
そしたらおかしいって気付くだろ』

優悟に言われた言葉が、頭の中で存在感を増す。
いつか言われて、ずっと頭のどこかにはあった言葉が、これでもかと主張していて……不安からか焦りからかバクバクと心臓が速くなる。

唐突に現実を突きつけられた気がしてしまい舞衣が焦燥感に襲われただ呆然としていると、ギリッと歯を食いしばった女が再び手を振り上げた。
それをぼんやりと視点の合わない目で眺めていた時。ぐいっと腕を引かれ舞衣がハッとする。

見れば、眉を寄せた優悟が女の方を見ながら舞衣の腕を掴んでいて……その瞳が舞衣を捕えるなり驚き、再び歪んだ。

「え、おまえ今の前にも殴られてたのか?」
「え……」

ぼんやりしていた頭で考えてからハッとし頬を隠すももう遅かった。そもそも、叩かれるような事をしたつもりもなければ言ったつもりもないのだから、庇う必要もないのだけれど……。
なんとなく、素直に叩かれたと言うのは告げ口をしているみたいで嫌で。

どう答えようと視線を泳がせていると、それを答えにとったのか、優悟が女を睨むように見た。
突然現れた優悟に、女は嬉しそうな表情を浮かべていた。